その1:セシウム合計75Bq/kgを茹でたらどうなるの?
その2:茹でた麺を再び乾燥させたら、どうなるの?
乾麺のうどん実験 その1
~ セシウム合計75Bq/kgを茹でたらどうなるの? ~
先日測った乾麺のうどん(原料小麦:23年度横浜市内産)から、セシウム合計75Bq/kgが検出されました。
以下(表1)がその時の数値です。
その同じ商品、同じ賞味期限のうどんを茹でて測ったら、放射能値はどうなるの?
沢山減る?そうでもない?
気になったので、茹でて測ってみました。
(※同商品、同じ賞味期限のうどんを測定機4台で測りましたが、値は誤差範囲でしたので、同じ放射能濃度と仮定させて頂きます。)
(表1)
検体名 | 測定番号 | 測定時間 (s) | 測定重量 (g) | I-131 (Bq/Kg) | Cs-137 ( Bq/Kg) | Cs-134 (Bq/Kg) | Cs合計 (Bq/Kg) | K-40 (Bq/Kg) |
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うどん(乾麺) | IA-0627-3 | 3600 | 856 | ND | 41.7± 9.1 | 33.5± 7.0 | 75.2± 11.5 | 44.8± 23.4 |
測定番号IA-0627-3と同じ賞味期限の856グラムの乾麺を用意する。
水は、ご家庭で普通に茹でる事を想定して、横浜市の水道水を使用します。
250gの麺に対して、2~3Lの水で茹でるとパッケージに書いてあったので、6.7Lの水で茹でました。
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*パッケージの茹で方より抜粋*
1、沸騰したお湯の中へパラパラと入れ、箸で軽くほぐします。
2、再び沸騰したら火を弱め吹きこぼれないように注意し、(6~8分)途中数本出してお好みの固さまでゆでます。
3、ザルにとり、水洗いをして水を切ります。
※人によって洗い方が違うと思いますが、実験者基準で、ため洗い2回の上、ざるで流水で丁寧に洗いました。
856グラムの乾麺が、茹でたら2133グラムに、およそ2.5倍になりました。
マリネリ容器1Lに入れると、1122グラムになりました。
AT1320Aにセットして、測定開始~~~
結果は、以下(表2)です。
(表2)
検体名 | 測定番号 | 測定時間 (s) | 測定重量 (g) | I-131 (Bq/Kg) | Cs-137 ( Bq/Kg) | Cs-134 (Bq/Kg) | Cs合計 (Bq/Kg) | K-40 (Bq/Kg) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
うどん (茹で) | IA-0717-6 | 36000 | 1122 | 0.27± 0.29 ※1 | 2.57± 0.72 | 1.56±0.55 | 4.13±0.91 | ND |
※1 I-131がわずかにゼロを越えた値をとっているのは、天然放射性核種(Pb-214等)や、測定環境の揺らぎの影響によると考えられます。この測定機器の検出限界以下でありスペクトルにピークは確認できません。不検出と判断します。
*結果コメント*
乾うどんや、乾そうめん等の乾麺を茹でて、食べる状態にするとざっとですが、重量は2.5~2.8倍程度になります。
増えた分は水分なので、仮に、乾うどんから放射性セシウムが、茹汁に全く移行しないとした場合、放射性セシウム濃度は乾うどんの状態での測定値の、1/2.5 になります。
今回の実験では、放射性セシウムを 75 Bq/Kg 持つ乾麺を茹でたら 4.13 Bq/Kg になりました。
放射性セシウム濃度としては、なんと 1/18 にまで減少したことになります。但しこれは単位重量あたりでの比較ですので、水を含んで重くなった分、放射性セシウム濃度は薄まることにになります。
また、検体の状態を考えますと、茹うどんは多くの水分を含みます。水分は、ガンマ線を遮蔽減衰する効果がありますので検体の含水による「見かけの放射性セシウム濃度低下」があるかもしれません。
次の「茹うどんの再乾燥実験」では、総量での比較をしてみようと思います。合わせてご覧ください。
乾麺のうどん実験 その2
~ 茹でた麺を再び乾燥させたら、どうなるの? ~
ついでに実験です。水分によるセシウムの減衰がどれくらいなのか調べてみます。
茹でたら2133グラムになった麺を、オーブンレンジを使い再び乾燥させてみました。
上左が茹でうどんで、上右が再乾燥させたうどんです。
再乾燥すると、パリパリの固い麺になりました。茹でる前の乾麺より水分が少なく、総重量729グラムの
再乾燥麺になりました。最初の乾麺856グラムから127グラムの水分が飛んだ事になります。
マリネリ容器1Lに入れ
AT1320Aにセットして、測定開始~~~
結果は、以下(表3)です。
(表3)
検体名 | 測定番号 | 測定時間 (s) | 測定重量 (g) | I-131 (Bq/Kg) | Cs-137 ( Bq/Kg) | Cs-134 (Bq/Kg) | Cs合計 (Bq/Kg) | K-40 (Bq/Kg) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
うどん (茹でて再乾燥) | IB-0723-2_1 | 7200 | 729 | ND | 8.54± 2.41 | 6.25±1.87 | 14.8±3.05 | ND |
*結果コメント*
茹うどんを再乾燥させてみたところ、放射性セシウム濃度は 14.8 Bq/Kg となりました。
茹うどんの状態では 4.13 Bq/Kg でしたので、随分増えてしまいました。
ここから少々ややこしい話になりますが、お茶でも飲みながらじっくりお読みください。
まず、数値を整理してみます。
・乾うどん :総重量 856 [g] で、75 [Bq/Kg]
・茹うどん :総重量 2133 [g] で、4.13 [Bq/Kg]
・再乾燥うどん:総重量 729 [g] で、14.8 [Bq/Kg]
では、実際にそれぞれの状態での、セシウム総量を計算してみます。
・乾うどん : 0.856 x 75 = 64.2 [Bq/検体]
・茹うどん : 2.133 x 4.13 = 8.8 [Bq/検体]
・再乾燥うどん: 0.729 x 14.8 = 10.8 [Bq/検体]
茹うどんを再乾燥させた 再乾燥うどん は、茹うどんに比べて放射性セシウムが一気に増えたように見えますが、実はそうでは無く、放射性セシウム総量はほぼ同じ程度と言えます。水分が飛んでうどん全体の重量が減ったために、単位重量あたりの放射性セシウム濃度が濃くなったということです。
話が逸れますが、みなさん、放射性物質の取り扱いについて、「総量規制」という言葉を聞いたことがあると思います。今回のように、放射性物質の単位重量あたりの濃度でのみ比較してしまうと、減少したり増えたりして見えるものが、「総量」で比較してみると、はじめに受けた印象とはまるで違った状態であることに気が付くことがよくあります。汚染土の埋め立て問題も同様に、「キロあたり何ベクレル以下は埋め立ててOK」という基準はナンセンスで、「キロあたり何ベクレルのものを何キロまで埋め立ててOK」としないと、意味をなさないわけです。
当たり前ですよね。濃い汚染土を、綺麗な土と混ぜれば当然汚染度は低下します。でも、そこに含まれる放射性物質の量は、全く変化していないわけです。
話を元に戻します。
8.8と10.8は、今回の測定ではギリギリ誤差の範囲内に収まるか収まらないかの差分ですが、茹うどんのコメントでも書きました通り、水分量が多いとガンマ線が減衰しますので、茹うどんは、多少なりとも「見かけの放射性セシウム濃度」は低いほうへバイアスされていると思われます。
茹うどんを再乾燥させることで、失われる放射性セシウムはほとんど無いと言ってよいと思いますので、今回の実験で比較すべきは、乾うどんと、それを茹でて再乾燥させた検体の測定結果の二つと言えます。
この二つで比較すると、茹でることで、うどんに含まれる放射性セシウム量は、総量でほぼ 1/6 に減少すると考えられます。残りの 5/6 は、茹汁に移行したものと考えられます。
さて、では、このうどんを一食分食べると、どのぐらいの放射性セシウムを食べることになるのかな?
乾うどん1人前は、ざくっと100 [g]ぐらいです。茹であがりでうどん重量で 280 [g]ぐらいです。
再乾燥うどんの測定結果から、一食あたりの放射性セシウム量を計算してみますと・・・
・再乾燥うどん:14.8 [Bq/Kg] x 0.10 = 1.48 [Bq]
放射性セシウムを 75 Bq/Kg 持つ乾麺を茹でて食べると、一食あたり放射性セシウムが 1.48 [Bq] 含まれるということになります。