セシウム合計66Bq/kgの全粒粉を使ってパンを焼いたら、パン1枚は何ベクレルになるの?
7月に測った全粒粉(栃木県23年度産)から、セシウム合計66Bq/kgが検出されました。
以下(表1)がその時の数値です。
その全粒粉を使ってパンを焼いたら、何ベクレルになるの? パン1枚は何ベクレルのなるの?
気になったので、パンを焼いて測ってみました
(表1)
検体名 | 測定番号 | 測定時間 (s) | 測定重量 (g) | I-131 (Bq/Kg) | Cs-137 ( Bq/Kg) | Cs-134 (Bq/Kg) | Cs合計 (Bq/Kg) | K-40 (Bq/Kg) |
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全粒粉 | IA-0706-1_2 | 7200 | 808 | ND | 36.6±7.7 | 29.8±6.1 | 66.4±9.82 | 178±41 |
パンのレシピは、ホームベーカリー(1斤焼き用)に付属したレシピ(左上画像)を使いました。
全粒粉以外の材料は、以下の産地です。
強力粉はカナダ産100%、バターは北海道産、スキムミルクは北海道産、冷水はミネラルウォーター、砂糖、塩、ドライイーストは国産の普及品を使用しました。
ホームベーカリーに材料をセットして、焼けるのを待ちます。
1斤を2つ焼きました。
1斤433グラムで、
合計、866グラムです。
マリネリ容器1Lに入れると、831グラムになりました。AT1320Aにセットして、測定開始~~~
結果は、以下(表2)です。
(表2)
検体名 | 測定番号 | 測定時間 (s) | 測定重量 (g) | I-131 (Bq/Kg) | Cs-137 ( Bq/Kg) | Cs-134 (Bq/Kg) | Cs合計 (Bq/Kg) | K-40 (Bq/Kg) |
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全粒粉パン | IA-0723-1_1 | 7200 | 831 | 0.45±0.88 | 9.16±2.44 | 8.36±2.15 | 17.5±3.25 | 84.6±23.5 |
*コメント*
測定結果中に反応が出ている放射性ヨウ素は、本測定の検出限界以下の数値であり意味はありません。天然核種(214Pb)に反応している可能性が高く、いずれにしても不検出ですのでご安心ください。
放射性セシウムで汚染された全粒粉でパンを焼くと、焼き上がりのパンにはどの程度の放射性セシウムが含まれることになるのか?
今回の食パンを焼く工程を考えてみますと、乾うどんを茹でたときのように、茹で汁を捨てたり、茹であがったうどんを水であらったりするという工程は無く、はじめにホームベーカリーに全ての原材料を入れたあとは、それをそのまま焼くだけです。物質の収支で考えますと、焼く工程で水分と、ごくわずかなその他の成分が蒸発揮散するだけで、放射性セシウムがどこかに逃げていける経路はありません。
前回の乾うどん実験のときと同様に、総セシウム という考え方で収支を見てみます。
使用した全粒粉は、66 Bq/Kg の放射性セシウムを含み、これを、0.25 Kg 使ったので、総セシウムは、66 x 0.25 = 16.5 Bq。
焼きあがったパン2斤は、17.5 Bq/Kg の放射性セシウムを含み、総重量 0.866 kg なので、総セシウムは、17.5 x 0.866 = 15.1 Bq。
非常によく整合しています。このレベルの濃度であれば、1ベクレル少々の差は誤差と言ってよい程度の差です。
すなわち今回の調理実験においては、放射性セシウムが系外に溶出移行する経路が無いため、総量はそのまま保存されるわけであり、実験結果からもそれを裏付けることができたと言えます。
では、焼きあがったパン1枚に含まれる放射性セシウムは、どのぐらいの濃度になるのでしょうか?
66 Bq/Kg の放射性セシウム汚染を受けた全粒粉を 250g 使ってパン2斤を焼いた場合、含まれる総セシウム量は上記の計算通り、16.5 Bq となります。
あとは、この2斤を何枚に切るか・・・ですね。
1斤6枚切りで食べるなら、2斤で12枚なので、16.5 / 12 = 1.38 Bq/枚。
1斤8枚切りで食べるなら、2斤で16枚なので、16.5 / 16 = 1.03 Bq/枚。
と、なります。
前回の乾うどん実験の際には、75 Bq/Kg の放射性セシウム汚染を受けた乾麺を茹でた場合、うどん1食当たり 1.48 Bq の放射性セシウムが残存することがわかりました。
今回のパン実験では、66 Bq/Kg の放射性セシウム汚染を受けた全粒粉と、汚染が無いと思われる強力粉を 1:1 の比率で使ってパンを焼いた場合、1斤6枚切りの場合で、パン1枚当たり 1.38 Bq の放射性セシウムが存在することがわかりました。
内部被曝管理をされるうえで、参考にしていただければ幸いです。
横浜市民測定所分析担当:青木
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