※ 本資料は、当測定所分析スタッフの青木氏が個人のFacebookに投稿したものです。 随時更新されますのでたまにご覧ください。
2013年10月12日 11:47
2013年10月13日追記
青木 康雄
これから、長きに渡って放射能と付き合わざるを得ない日本において、半減期とベクレル、これだけはしっかり押さえておかないと、ダメです。
もはや原子力安全神話は完全に崩壊。我が身を守るため、家族を守るため、友人知人、大切な人を守るため、そして、地域、日本、地球を守るため、最低限度、半減期とベクレルの考え方は、みなさんマスターしましょう!
専門知識の無い初心者のかた向けに、なるべく専門用語を使わず、説明を試みます。ですので、一部、あまりにも飛躍しすぎた意訳や乱暴な例え、概念を理解するに支障のない少々のウソ ^^) が含まれますがご容赦ください。かなり長文です。一通り読むのに15分間ぐらいかかるかな? 少しお時間あるひと時、珈琲片手に、ごゆっくりどうぞ。
放射線について
まずはじめに、そもそも放射線とはなんぞや? というところから簡単に説明します。
今、私たちが問題視している放射線に限って言うと、アルファ線、ベータ線、ガンマ線という三種の放射線があります。これら放射線は、放射性物質というものから出されます。
よく聞くセシウム137とか、ヨウ素131というものが、その放射性物質にあたります。放射性物質というものは・・・そうですね〜、すんごく小さい粒だと思ってください。水素とか、酸素とか、炭素とか、聞かれたことあるかと思いますが、これらを「原子」と言います。この原子を、まずは「すんごく小さい粒」としておきます。
この世の全てのものは、この「原子」から出来ています。すんごく小さい粒の集まりなんですね。なかでも、放射性物質の粒は、不安定な状態で、いまにもはじけそうな粒なんです。早く安定な状態になりたくて、うずうずしています。で、ある「きっかけ」で、はじけて安定な状態に変化するのですが、このはじける瞬間に、放射線を出します。
放射性物質によって出される放射線の種類や数は異なるのですが、今はそんなことはどうでもいいです。
「放射性物質というものは不安定なものであり、ある「きっかけ」で、安定な状態に変化するのだが、この変化する(はじけて)瞬間に、放射線が出る。」ということだけ、覚えておいてください。
ちなみに、このはじけることを、「崩壊」(あるいは壊変)と、言います。
放射線の出方
すなわち、放射線とは、ラジオの電波か懐中電灯の光のように、「ずーっと連続して」出続けているものではありません。粒がはじけた時に、一度だけ、放射線を出します。(実は懐中電灯の光は、粒でもあるのでこの例えはウソなのですが、ここでは体感できるイメージとしてそこは不問とします。気にしないでください。)
- 今にも割れそうなほどパンパンに膨らんだ風船を想像してみてください。この風船が割れたとき、「ぱんっ!」って、音がしますね。放射性物質がはじけるのは、この風船が割れるのと同じような感じ。で、その時出る放射線は、「ぱんっ!」っていう、音のような感じと思っていただだければよろしいかと。すなわち、放射性物質があったとしても、はじけない限り、放射線は出てこないんですね。(2013年10月13日追記)
例えば、セシウム137が一粒あったとします。この一粒がはじけると、一度だけ放射線が出ます。はじけたセシウム137は、安定なバリウム137となって放射性物質では無くなりますので、もうはじけません。放射線は出さないということですね。
一粒のセシウム137は、一度(一発)だけしか放射線を出さないということです。ちょうど、ポップコーンに似ています。とうもろこしをフライパンで炒ると、だんだんはじけてきますよね。
コーンが200個あったとしたら、不発は無しとすれば、200回はじければ全部お仕舞いです。これと同じで、セシウム137が200粒あったら、200回放射線を出せばセシウム137はゼロになる(全部、安定なバリウム137になる)ということです。
さて、だんだんと、核心に迫ってきました ^^)
はじけるための「きっかけ」とは?
ここが山場です ^^) 普段、あまり馴染みのない考え方なので、じっくり読み進めてください。
放射性物質は不安定だけど、はじけて安定になれる。で、この、はじけた時に放射線が出る・・・というところまでは理解できたと思いますが、では、この、はじける「きっかけ」は、なにでもたらされるのか?
これは、確率なんですね。ここが難しいところです。
半減期:その放射性物質の濃度が半分になるために必要な時間。
ということは、みなさんうすうす知っていると思います。が、これ、よく考えてみると、非常に不思議な性質です。
「セシウム137は30年で半分になるのだから、60年で全部無くなるんでしょ?」
という質問をよくいただいたのですが、これは違うんです。放射性物質の濃度は、半減期後には今の半分になっているのですが、半減期後からさらに半減期を過ぎても、半減期後の濃度の半分にしかならないです。すなわち、四分の一ってことですね。
目の前にセシウム137が二粒あった場合、30年の間に、一粒が崩壊して放射線を出すのですが、これは、今、目の前で起きることかもしれませんし、29.9年後に起きることかもしれないんです。さらに、29.9年後にまだセシウム137が二粒あったとすると、その二粒あるセシウム137が一粒になるのは、29.9年後から数えて30年以内ということになります。
さぁわからなくなってきました。
まずはじめに、放射性物質のはじけ方というのは、時間軸に対して一定量起こるものではなく、一定確率で起こるものだと言う点を説明したいと思います。
例えば、コップにギリギリ溢れるほどの水を入れたとします。これを一日放置した結果、半分蒸発して残りが半分となっていたら、二日経てば全部蒸発して無くなります。これは、時間軸に対して一定量起こる現象です。
10円玉を200枚持っていたとします。これを、一日一回、部屋にぶちまけて、裏が出た10円玉だけを取り除いていくとします。裏が出る確率が1/2だとすると、初日にぶちまけて裏が出た10円玉は100枚になりますので、100枚が取り除かれて残りは100枚になります。二日目、この100枚をぶちまけると、裏が出た10円玉は50枚ですよね? まさか全部裏になることは無いでしょう ^^) よって、50枚が取り除かれて、残りは50枚となります。
どうですか? わかりましたでしょうか? これが、「時間軸に対して一定確率で起こる」という現象です。
で、戻りますが、「放射性物質のはじけ方というのは、時間軸に対して一定量起こるものではなく、一定確率で起こるもの」ということになります。そしてこの、はじける「確率」が、半減期なんですね。
この半減期は、それぞれの放射性物質で固有の値を持っています。例えば、セシウム137なら約30年、ヨウ素131なら、約8日です。他にもたくさんの放射性物質がありますが、みなそれぞれ、固有の値を持っています。
『なんでそんなややこしいことになっているの?』という疑問を持たれるかと思いますが、ここはまずは、「そういうものなんだから仕方ない」ということで、疑問は棚にあげておいてください ^^)
半減期とはなんぞや?
半減期:その放射性物質の濃度が半分になるために必要な時間 です。これは上の例を使いますと、10円玉をぶちまける期間・・・ということになります。セシウム137の半減期は約30年なので、30年に一度、10円玉をぶちまけて裏が出た10円玉が除かれる・・・セシウム137が半分になる・・・ということですね。
実際には、半減期単位でみんなが「せーの!」とまとめてはじけるわけではなく、常に一定の確率で崩壊しているけれども、今から30年後には、今ある量の半分になるぐらいの確率ではじけるんだよってことです。
では、セシウム137が「ゼロ」になるのはいつ?
セシウム137自体の「寿命」って、どうなるのでしょう? 寿命は、「不明」ということになります。それは、確率で生死が決まるからです。
例えば、セシウム137が200個あったとします。半減期30年として、全体の個数はこうなりますよね?
今 :200 個
30年後:100 個
60年後: 50 個
90年後: 25 個
200個あった場合、30年後までに100個が消滅しましたが、90年後でも25個が生き残っています。
30年後までに消滅するものもあれば、90年以上生き残るものもある。これをみても、寿命というものは「不明」ということがわかります。
しかし、今の濃度が半分になるまでの期間は、はじける確率から出すことができますので、放射性物質が持つ放射能の時間的能力を示す数値として、「半減期」が使われるわけです。
例えばあなたがどこかの部屋に監禁されて、10円玉を持たされたとします。一日一回それを投げて、裏(表でもいいけど)が出たら釈放されるとした場合、何日目に釈放されるか、わからないですよね? ひょっとして今日いきなり裏が出るかもしれないし、明日かもしれない。いや、よっぽど10円玉運が悪ければ、十回投げても裏が出ないかもしれません。すなわち、あなた一人に着目すると、いつ部屋から出られるかは、やってみないとわからない。
しかし、あなた以外に199人、あなた含めて200人の人が監禁されていて、同様にみな10円玉を投げていたとしますと、たぶんですが、初日の投げで、半分ぐらいの人・・・100人ぐらいの人は釈放されることになるでしょう。放射性物質がはじけて放射線を出し、放射性物質でなくなる現象も、これとまったく同じ「確率」の仕組みで起きているのですね。
ですから、セシウム137が時間経過と共にどんどん減って行って、最後の1粒になったとします。この1粒は、いつはじけて無くなるのか。それは誰にもわからないんです。
今かもしれませんし、明日かもしれませんし、30年後かもしれないし、1000年後かもしれません。
ついでにベクレル
ここまでくれば、もうベクレルは余裕だと思います ^^)
ベクレルとは、「1秒間にはじける放射性物質の数」を指しています。
例えば、セシウム137が1ベクレルあったとします。これは、セシウム137が、1秒回に1個はじけるだけの量あるということです。よく勘違いしちゃうのですが、セシウム137自体が1個あるわけではありません。
セシウム137が1ベクレルあるということは、2個あったときに、30年に1個はじける程度のはじけ方をするセシウム137が、1秒間に1個はじけるぐらいの量ある・・・ということです。具体的には、13億6千万個です。
そうです。ベクレル数が同じであれば、半減期が長いもののほうが、放射性物質としての総量は多いことになります。
プルトニウム239の半減期は2万4千年です。プルトニウム239の1ベクレルとは、2個あったときに、2万4千年に1個はじける程度のものが、1秒間に1個はじけるぐらいの量ある・・・ということです。具体的数値はあげませんが、とんでもない数だろうことが容易に想像つきます。
ベクレル数というのは、その放射性物質の総数と関係があります。半減期を使えば、ベクレルから放射性物質の総数が計算できますが、ここではそんな細かいことはあんまり重要ではありません。重要なのは、半減期が経過すれば、ベクレルも半分になるという点です。
100ベクレルのセシウム137は、30年後には50ベクレルになっています。
そして、放射性物質の濃度を議論する際には、「単位」が重要です。同じベクレルであっても、そもモノの量が多いのか少ないのかで濃さが変わります。塩を10g、水に溶かした場合、同じ10gでも、コップ一杯の水に溶かしたのか、計量カップで測った1リットルの水に溶かしたのかで、濃さが変わりますよね。これと同様で、ベクレルも、量としてでなく、濃度として議論する際には単位が付きます。
1キログラム当たりのベクレル数は、Bq / Kg と書いたり、キロ当たり**ベクレル と書いたりします。
1リットル当たりのベクレル数は、Bq / l と書いたり、1リットル当たり**ベクレル と書いたりします。
1ml(cc)当たりのベクレル数は、Bq / ml と書いたり、1ml当たり**ベクレル と書いたりします。
世間一般でよく使われるのは、「キロ当たり」か「リットル当たり」ですが、たまーに、わざとじゃないとは思うのですが、東電発表の汚染水の濃度などは、ml当たりとか、グラム当たりになってたりするので注意が必要です ^^)
1ml当たり10ベクレルの水は、リットル当たりだと10000ベクレルです。
1グラム当たり10ベクレルの汚染は、キロ当たりだと10000ベクレルです。
これ、報道等を見るときに、注意してくださいね。
まとめますと:
- ベクレルとは、「1秒間にはじける放射性物質の数」を指している。
- ベクレルとは、放射性物質自体の数では無い。
- 同じベクレルなら、半減期の長いもののほうが、放射性物質総数は大きい。
- 半減期を過ぎれば、ベクレルも半分になる。
以上! 長々と、お疲れさまでした!